

テクシーリュクス(アシックス)〔左〕とバランスワークス(ムーンスター)〔右〕
今や、「疲れにくい革靴」という看板を掲げ、ビジネスシューズ界に新しい風を吹かせている2大巨頭。
今回は、この2つをどのような違いがあるか、検証していきたい。
見た目(アッパー)の違い
お互いに、発売されてから新品番が追加されているが、
ザックリ説明すると
テクシーリュクス…やや丸みを帯びた印象、甲の高さも高めに作られている
バランスワークス…ややシュッとした切れ長な印象、甲の高さはピッタリめ
といった感じだ。
テクシーリュクスの印象(見た目)
品番で言うと、
テクシーリュクスは、TU-7764とTU-7766(残念ながら両方とも廃盤となってしまった)が少し幅が広く見える3Eで、
TU-7756、TU-7782、TU-7783は幅が細く見える3Eだ。



左から、TU-7756、TU-7782、TU-7783
――個人的には、廃盤となってしまったTU-7764とTU-7766がどっしりとした風合いで他になく好きだったのだが、全体でみると細身な形の方が売れているということなのだろう。
その代わり、テクシーリュクスはTU-7795、TU-7796という4Eモデルが発売された。
これは他の商品よりもコバ部分が広く、かなりゆったりした印象である。


バランスワークスの印象(見た目)
バランスワークスは、全体的に細身な印象を受ける作りだが、一番スタンダードな SPH-4600、SPH-4601、SPH-4602が一番シュッとした3Eで、



その後出てきた SPH-4610(防水)、 SPH-4611(防水)、 SPH-4613SN(防水・雪対応) がつま先は細くスクエア――これがかっこいい――かつ、幅は少し余裕を持った3Eである。



また、SPH-4620(4E) や、SPH-4640TS(3E)、SPH-4641TS(3E) はラウンド型のつま先形状を採用しており、よりクラシックな印象になっている。



アッパー機能の違い
大きな違いとしては、
テクシーリュクスにだけ、シューレースのわきに少しの幅のサイドゴムが設計されている。これが、日々の脱ぎ履きのしやすさ、履いた時のフィット感を作っているのだろう。
脱ぎ履きがしやすいということは、言い換えればカカトを踏みにくいということでもある。
よりクラシックな見た目を欲するなら正直余計なものだが、日々の脱ぎ履きのことを考えるとグッドポイントである👍🏻
革質の違い
テクシーリュクスは、アシックスが作っている。
(正確には子会社のアシックス商事)
アシックスと言えば、日本が世界に誇る運動靴メーカーだ。
しかし、運動靴に本革を使うことはほとんどない。
そのせいか、どことなく、革の光沢感や品の良さはあまり感じられない。
比べて、バランスワークスは同じく日本メーカーのムーンスター(月星)が作っているが、
ムーンスターは、元は足袋から始まり、革靴、運動靴、上履き、登山靴などありとあらゆる靴をつくっているオールラウンドメーカーだ。
革の使い方も、つま先とカカト部分の光沢も見事であり、革質もテクシーリュクスと比べると良い革に見えてくる。

革質に関しては、バランスワークスに軍配のようだ。
ソールの意匠の違い
テクシーリュクスは、細かい意匠が施され、滑りにくそうな靴底だ。
〔画像〕
画像ではわかりずらいかもしれないが、手に取ってよく見ると、同じ意匠でも素材が違う部分があることに気付く。
カカトと母指球(親指の付け根)にはラバーが貼ってあり、意匠+ラバーでさらに滑りにくくする作戦のようだ。
テクシーリュクスは、靴底には基本的に同じ意匠を用いている。
違うデザインでも同じ履き心地であるというのはありがたい。
対して、バランスワークスは、スタンダードな SPH-4600、SPH-4601、SPH-4602、4Eモデルの SPH-4620 は、
少しのくぼみはありつつも、ラバーはなく、EVA(軽くクッション性が良い)素材とラバーを混ぜ合わせ、耐久性は残しつつも、軽量化を図っているようだ。
〔画像〕
しかし、防滑性・耐久性を考えると、すこし心もとない気もする。
防滑性に関していえば、防水設計の SPH-4610、SPH-4611と、防水・雪上防滑設計の SPH-4613 は、かなりの滑りにくさを発揮している。
防水・防滑設計 SPH-4610、SPH-4611 のラバー部分は、車の「スタッドレスタイヤ」と同じ原理を使っているとメーカー開発者は言う。
形状を見ると、特にタイル等の凹凸のない地面で防滑効果を発揮するタイプである。
〔画像〕
左から SPH-4610、SPH-4611、SPH-4613
特にSPH-4613は、雪上防滑(氷の上でもグリップする)というから驚きだ。
靴底を見てみると、ガラス繊維の配合された靴底になっているのがわかる。
〔画像〕
ラウンド型のつま先が採用された SPH- 4640TS、SPH- 4641TSは、防水の SPH- 4610 、SPH- 4611ほどのラバー量ではないものの、
カカト全体のラバーに加え、前足部の横一列(母指球とその一帯)にラバーを配置し、
軽量でありつつも、重要なところはラバーでしっかりカバーするという「タフなのに軽い」を実現している。
この軽さは、他のメーカーにはない軽さである。
これで耐久性もあるというのだから驚きだ?!
クッション性・機能の違い
ソールのコバ(ふち)を見ると、
テクシーリュクスはソールが厚底のようだ。
計測してみると、前足部で1.9cm、カカト部で3.4cmの厚みがある。
〔画像〕
靴底の素材自体がクッション材でできているのだから、厚みが増せばその分クッションは良くなる。
クッションが良いのは良い事なのだが、全体に少し野暮ったい感じがどうしてもでてしまう。
バランスワークスは、
スタンダードな SPH-4600、SPH-4601、SPH-4602は、
前足部で1.0cm、カカト部で3.1cmの厚み。
〔画像〕
4Eモデルの SPH- 4620)は、前足部で1.9cm、カカト部で3.3cmの厚み。
〔画像〕
防水・防滑設計 SPH- 4610 、SPH- 4611は、前足部で1.0cm、カカト部で3.5cmの厚み。
〔画像〕
防水・雪上防滑設計の SPH- 4613は、前足部で1.2cm、カカト部で3.75cmの厚み。
〔画像〕
ラウンド型のつま先 SPH- 4640TS、 SPH- 4641TSは、前足部で2.0cm、カカト部で3.9cmの厚み。
〔画像〕
前足部の厚みで並べると、
スタンダード < 防水・防滑 < 防水・雪上 < 4Eモデル < ラウンド型
という厚みの差が見受けられた。
――あれ?こっちも思ったより厚めの底で野暮ったいじゃん。と思った方も多いだろう。
スタンダード < 防水・防滑 < 防水・雪上 < 4Eモデル・バランスワークス < ラウンド型
となる。
しかし、バランスワークスは野暮ったい感じがしないのはなぜか…
個人的な思い込みの可能性もあるが、もしかしたら、コバ(ふち)の意匠の問題かもしれない。
〔画像〕
しかし、計測してみて初めて分かったが、こんなにも厚底でできていたと知って驚いている。
これが「疲れにくい革靴」のゆえんなのだ。
それと、バランスワークスには、もう一つ機能がある。
その名の通り、履くと“バランス”が良くなるのだ。
これが一番の売りなのだが、一見すると、よくわからない。
〔動画〕
メーカーの説明動画を見ていると、何となくわかってきた。
つまり、これはわざと靴底の真ん中を(違和感のない程度に)ほんの少しだけ削ることで、靴の縁にかかる力を強めているのだ。
これは、ぐう乳パックと同じ原理なのだとか。
インソールの違い
最後に、インソールを比べてみよう。
これは、両者とも、ほとんど型番の違いはない。
〔画像〕
テクシーリュクスは、カップインソール。
つま先の捨て寸(足の入らない空間)部分に「moff」という防臭素材が貼られている。
蒸れやすい革靴の中だからこそ、うれしい気遣いだ。
バランスワークスにも、抗菌防臭素材が使われている。
ここは、革靴メーカーなら欠かせないところなのかもしれないが、
とにかくうれしい。
〔画像〕
加えて、バランスワークスのインソールには、小さい突起が無数についている。
これは、足のツボを押す効果―――と思いがちだが、違うのだ。
これは、バランスを重視する企画だからこそできた突起で、
足裏が傾いたりバランスを崩したときに、この突起があることで、自分自身の足の傾きに気付くためのものなのだそうだ。
とことんまで、バランスに特化したビジネスシューズということか。
【結論】どちらも優秀だったが…
防滑性能やクッション性、耐久性や、バランス性など、
見た目もさることながら、履き心地が変わってくることから、好みが分かれるところのようだ。
そう考えると、安定したクッション感を持ったテクシーリュクスか、
様々な場面を想定して、対応するようにつくられたムーンスターか、
しようする環境によって履き替えてもいいのかもしれない。
――個人的には、「タフなのに軽い」 SPH- 4241TSが一番好みだったので、これからも愛用して行こうと思う。
元来、革靴はしっかりお手入れして、エイジングを楽しむものだという。
皆さんも、革靴のエイジングを楽しんでみてはいかがだろうか。